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用語


カソード (cathode)
正極を表す。燃料電池では、電子を受け取る側、つまり酸素(空気)側である。

陽イオン交換膜 (proton exchange membrane PEM)
固体高分子型燃料電池の心臓部である固体高分子膜を表す。言葉の通り、陽イオンを透過させる(燃料電池の場合は,水素イオン)。現在は、スルホン酸系のものが使用されており、弱酸性である。

セパレータ (separator)
ガスを流すための流路が刻まれた導電性を持つ板。カーボン製、金属製があるが、膜が弱酸性であるため、耐腐食性を考慮して、カーボン製のものを使用している。

触媒層 (catalyst layer)
陽イオン交換膜表面に触媒が塗布されている層。主流となっているのは、カーボン粒子に白金(Pt)を担持したもの。しかし、白金が高価であり、コスト増大の原因となっているため、白金担持量の減少、白金以外の触媒の研究、などの課題がある。

拡散層 (backing layer)
陽イオン交換膜とセパレータの間にある、ガスを膜上に均一に拡散させるためのもの。カーボンクロス、カーボンペーパなどが使用されている。

MEA (membrane electrode assembly)
陽イオン交換膜と触媒層が一体となったもの。本研究室ではこれを使用している。

単セル (single cell)
1枚の膜を使用した燃料電池。

スタック (stack)
複数のセルを積層したもの。乾電池を直列に複数つなげたようなものと考えれば良い。実際のシステムでは100〜200セルを積層したスタックを用いている。

電流密度 (current density)
単位面積あたりに流れる電流(電流/面積)。例えば、電流密度1A/cm2、反応面積100cm2のとき、実際に流れる電流は100Aとなる。

開回路電圧 (open circuit voltage OCV)
負荷をかけていない状態(電流を流していない状態)の電池電圧。乾電池で言えば、1.5V。開回路電圧は、水素と酸素が反応して水になる際の、エンタルピー変化からエントロピー損失分を差し引いたもの(これをギプスの自由エネルギーという)を電圧に変換した値。燃料電池では、理論的には1.23V(HHV換算,20℃)であるが、実際は良くて1.02Vぐらい。また、触媒の性能が落ちてくるとOCVも下がる。

過電圧 (over voltage)
負荷をかけたときに電圧を下げる抵抗の総称。過電圧には、活性化過電圧、濃度過電圧、抵抗過電圧の3種類がある。過電圧を下げることが、燃料電池の性能を上げるポイントとなる。

活性化過電圧 (activation over voltage)
過電圧の1つ。水素がアノード触媒で、水素イオンとなる際にはエネルギーが必要となる(これを活性化エネルギーいう)が、このエネルギーが損失分となって、電圧を下げてしまう。活性化過電圧の増大・減少は、活性化エネルギーを下げる働きをもつ触媒の性能がカギを握る。

抵抗過電圧 (resistance over voltage)
過電圧の1つ。電池が持っている内部抵抗により、電圧が下がる現象。電池の内部抵抗は、電池の部材(セパレータなど)の接触抵抗が大きく影響するため,電池組み立ての際は十分注意を要する。

濃度過電圧 (concentration over voltage)
過電圧の1つ。電極における反応物質および反応生成物の補給・除去が遅く、電極反応が阻害されるため、電圧が下がる現象。

逆電圧 (reverse voltage)
OCVより過電圧のほうが大きくなってしまう現象。この現象が起こると、触媒層の白金がカーボンから剥離し、性能が下がる。そのため、十分に気をつける必要がある。

クロスオーバー (cross over)
ガスが触媒層で反応することなく、膜を透過してしまう現象。これが起こると性能は低下する。クロスオーバーは、膜の厚さが薄いほど、また、アノード、カソードに圧力差があると起こりやすい。

イオン伝導度 (ion conductivity)
言葉の通り、イオンの伝わりやすさ。当然高いほうが望ましい。陽イオン交換膜のイオン伝導度は、含水量によって左右される。含水量を高く保つために、ガスを加湿して外部から水分を供給する必要がある。

電気浸透抗力 (electro osmotic drag)
水素イオンがアノード側からカソード側に移動する力。厳密に言うと、水素イオンは膜中の水分と水和して移動するので、その水分が移動する力。

逆拡散 (back diffusion)
カソードからアノードへ水分が移動すること。つまり、電気浸透抗力の逆。よって、アノードからカソードへの正味の水分移動は、(電気浸透抗力による水分移動)−(逆拡散による水分移動)により決まる。

フラッディング (flooding)
膜付近での水分が過多となり、ガスの拡散を阻害することで、電池の性能を下げてしまう現象。

ドライアウト (dry out)
膜に供給される水分が不足し、イオン伝導度が下がることで、電池の性能が下がる現象。

吸着 (absorption)
ガス原子が触媒にくっつくこと。これが起こることで、初めて反応が起こる。

改質 (reforming)
ここでは、燃料電池の燃料である水素を作り出す技術。メタノール改質、ガソリン改質、天然ガス改質などが研究されており、排出されるCOの減少、起動速度、運転温度などの課題がある。

CO被毒 (CO poisoning)
ガスの吸着には順位があり、燃料電池の燃料である水素よりも吸着しやすいものがCOつまり一酸化炭素である。このCOが水素より先に触媒に吸着し、反応をまたげる現象をCO被毒という。燃料の改質では、改質に際にCOが出てしまうが、これを少なくすることが課題の一つである。

利用率 (utilization)
反応に対して、どれだけガスが使われているかを示す割合。例えば、利用率アノード80%、カソード40%の場合、流したガスに対して、水素80%、酸素40%が反応に使われている、ということ。

直交流 (cross flow)
反応面でアノードガスとカソードガスがクロス(交差)するようにガスを流すこと.反応面内で温度差が生じやすく、温度・水分管理が難しい。

並行流 (co-flow)
アノードガスとカソードガスが並行するようにガスを流すこと。ガス流路上流側と下流側で温度差ができやすい。電池の構造上、反応面内すべての部分で並行流とするのは難しい。

対向流 (counter flow)
アノードガスとカソードガスが向かい合うようにガスを流すこと。反応面内での温度差が最もできにくく、有利であるが、並行流と同様に、すべての面内で対向流とすることは難しい。



 
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